2020/03/13

O JUN展 桃のある遠景 ー 1990 年の仕事からー



O JUN展
桃のある遠景ー 1990 年の仕事からー
2020.3.14 (sat) - 6.14(sun)

大好評により会期延期!!~~2020. 7.12.(日)まで。

また、6月27日(土)16時より

O JUNさんによるパフォーマンス「7億8840万900秒後の此処」決定
https://artdrugcenterishinomaki.blogspot.com/2020/06/o-jun78840900.html





 (参考作品;untitled ©️O JUN)

アートドラッグセンター(宮城県石巻市)は、3 月 14日(土)より O JUN 展 ・桃のある遠景を 開催します。1990 年の渡欧前、双ギャラリー(東京)にて発表された作品-桃-に交え、制作当時の意図を 反映する未発表の習作。そして、親交のあった文化人類学者の故・西江雅之氏に贈られた絵画と西江氏のこれまでに訪れた風景を思い描いた大作を含めた展示となっております。

O JUN 氏。現在は、東京芸術大学で教鞭を執る一方、ミヅマアートギャラリー(東京)に所属し、 精力的に作品を発表し続けられています。 今回の企画は、「西江先生へのオマージュのような」巡り合わせを感じています。タイトルは西江雅之著『花のある遠景』(せりか書房、旺文社文庫、福武書店、青土社、左右社)から一部 拝借しました。 時間と空間にまつわる距離感、そして想像することの多様さをご高覧賜れましたら幸いです。
企画者:守 章(もり あきら・アーティスト)

言語学者であり文化人類学者の西江雅之さんが亡くなった。その一週間前に早稲田の病院に見舞いに行ったのが最期に なった。病室を出るときに西江さんはベッドから身を起して手を差し出された。わたしは両手でその手を握った。当時 十八歳のわたしがたまたま目白の喫茶店で西江さんに出会い、そこでアルチュール・ランボオの話をうかがってから 四十一年目の別れとなった。亡くなる三日前に日本橋のギャラリー・ハシモトで西江雅之『影を拾う』(写真展)が 開かれた。わたしは高松に出張に行っていて初日にはうかがえず翌日に行った。入口の廊下の壁に二枚の大きな写真が 貼られていた。一枚はアデンの街の写真。もう一枚は兵庫県揖保川の写真だった。アデンは、『地獄の季節』を書いた ランボオが十九歳で詩人をやめ砂漠の武器商人になって駐在していた街だ。西江さんが大学生の時にアフリカ縦断の旅をこの地から出発している。揖保川は西江さんが子どもの頃に太平洋戦争中一時疎開していた地だ。亡くなった翌日に大学で絵画創作概論の授業の二回目があった。前の週に一回目があってそこで西江さんのことを学生たちに少し話した。授業のタイトルは『絵を描くということ―その前、中、後』で、絵を描く前と描いた後はループしているので、 絵以外で自分に影響を与えた人や事について話をした。その時に西江さんのことを学生たちに少し話した。翌週の二回 目では“絵の最中”ということで、自作の制作過程やライブの動画を見せて最後の二十分間で実際に絵を描くことにしていた。二枚のラワンベニヤに白の壁塗料を塗ってそこに棒状に流し固めた鉛と錫でアデンと揖保川の風景を描くつもり だった。西江さんは死んでしまったが、絵は描こうと思った。授業の終了二十分前に後ろの大きなホワイトボードを スクリーン代わりにして二つの風景を映し、そこに白く塗ったラワンベニヤを立掛けて鉛と錫の棒で描いた。揖保川の 川岸に生えている水草の茂みを点描で描いていたらベニヤに当たって鳴る音が意外に大きく響くのでなぜか必要以上に連打してしまった。アデンの街を描いている時に先ほどの連打で左手首が痛くて使えなくなったので右手に棒を持ち替えて描いた。終わってみたら十五分しか経っていなかった。それでもすっかり息が上がってしまった。ホワイトボードに絵のタイトルを書いた。アデンは片仮名でよかったが、“揖保”が描けずこちらも片仮名にした。ところがわたしは、 “イビガワ”と書き間違えた。学生たちには西江さんが亡くなったことは言わなかった。亡くなった直後、西江さんの 関係の方から騒ぎになると近親者に迷惑が及ぶのでしばらく伏せていてほしいと言われたからだ。「タブーというのはね、してはいけないからではないのですね。みんながよくそれをやったり、知っているからタブーにするのですよ」、「“ここに机がある”ということは、世の中には机じゃないものがあるということを言っているのですよ」。この人は、わたしの血相を何度も変えた。そして、そのたびにわたしは自分の絵を何度も見返した。優しくて恐ろしい人だった。 『アデン』、『揖保川』を西江雅之氏に捧げる。
O JUN
【2016 年 5 月 25 日ー 6 月 25 日、ミヅマアートギャラリーで開催された
O JUN 展『飛び立つ鳩に、驚く私~A Pigeon Flies Of , I Get Startled~】展示テキストより抜粋

これは一昨年にお亡くなりになった文化人類学の西江雅之さんの受け売りでして。ある時に喫茶店で話をしていたら、たまたま客が席を立ってしまった椅子が あったんです。「これはなんで すか。」といきなり 言われたので 、「椅子で すよ。」と言ったら「そりゃあ椅子なんだ けれど も、それはどういうことなのかわかりますか?」と言われました。この人は何を言ってるのかなと思ったので すが「ここに椅子がある、ということは、椅子じゃないものが 他にたくさんあるということなのです。」と言われて、世界ってのはそういう捉え方もできるんだと思いました。“多様である” と。それからは、無いものをどう見るのかや、どう想像するのかについていつも自問する様になりました。
O JUN

【2017 年 11 月 18 日 、東京藝術大学 130 周年記念事業 全国美術・教育リサーチプロジェクトラウンドテーブル 「美術」において育成すべき資質・能力とは? -東京藝術大学教員と幼・小・中・高の教員による 公開ディスカッション-4p】 より抜粋

▪ 作家名_O JUN(オウジュン)
▪ 展覧会名_桃のある遠景−1990 年の仕事から−
▪ 会期_ 2020年3月14日(土)~ 6月14日(日) Open: 土・日 12:00-18:00
▪ 会場_ART DRUG CENTER
〒986-0822 石巻市中央 1-2-7 2F
▪ 協力_双ギャラリー
http://www.soh-gallery.com/home/
▪ 協力_ミヅマアートギャラリー http://mizuma-art.co.jp/


O JUN 
1956 東京生まれ 
1980 東京藝術大学美術学部油画科卒業 
1982 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修士修了 
1984-85 スペイン(バルセロナ)滞在 
1990-94 ドイツ(デュセルドルフ)滞在 
2007 文化庁芸術家在外派遣研修員としてアルゼンチン(ブエノスアイレス)滞在
2009年 東京芸術大学美術学部油画科准教授、在任中。
2014年~東京藝術大学美術学部教授。絵画科油画専攻に於いて学部、大学院を指導する。

展覧会歴:
https://mizuma-art.co.jp/wp-content/uploads/2018/01/O-JUN_cv_jp_1910.pdf











石巻かほく 2020年4月15日




石巻日日新聞 2020年5月23日